コロナによる遠隔医療の拡大や5G(第5世代移動通信システム)の普及が追い風となり、IoMT(Internet of Medical Things/医療に特化したモノのインターネット)市場が急成長を遂げている。

しかし医療テクノロジーの進化は、そこで止まらない。2030年代の実現を目指し、各国が取り組んでいる6G(第6世代移動通信システム)の登場により、IoMT が「IIoMT(Intelligent Internet of Medical Things)」へと進化を遂げると予想されている。

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(画像=metamorworks / PIXTA / ZUU online)

5Gが加速させるIoMT

IoMTとは、あらゆるモノがインターネット経由でつながるIoT(モノのインターネット)を、医療やヘルスケア分野に特化させたものだ。様々な医療機器やデバイスを病院やヘルスケア機関のシステムと接続することで、患者のデータ収集や解析、共有などをリアルタイムで行うという概念である。

コロナを機に日本でも普及が広まっている「オンライン診療」が、既存の4Gを利用したD2P(医師・患者間)型のコミュニケーションであるのに対し、高速・大容量、低延滞、多数端末との接続を特徴とする5Gでは、D2D(医師・医師間)型のコミュニケーションが可能だ。

遠隔地にいる医師間で、高画質の画像を含む患者のデータをリアルタイムで共有できるため、例えばA病院の医師が患者を診察・治療する様子を観察しながら、B病院の専門家がリアルタイムでアドバイスを行うといった、ハイレベルな遠隔診療・治療が実現する。

あるいはAI(人工知能)と組み合わせることで、ビッグデータの処理効果が劇的に向上するため、膨大な医療データ処理を要する免疫細胞療法など、様々ながん治療に貢献すると期待されている。

AI×5G×IoMTの実用化はすでにスタートしており、インテルの「All in One Day Precision Medicine for Cancer Patients」のように3つのテクノロジーを活用し、24時間以内に検査や精密治療法をがん患者に提供するというサービスもある。

「IIoMT」で完全AI駆動型の医療システムが実現する?

2030年前後には5G から6Gへの移行が予定されているが、IoMTにはどのような影響があるのか。

現時点においては、6Gが5Gの特徴をさらに向上させたものになるという仮定のもと、「IIoMT(医療に特化したモノのインテリジェント・インターネット)」という構想が生まれている。

これは、知能をもったインターネット――つまり人工知能(AI)を基盤に、インターネットによって様々な医療デバイスやアプリケーションがつながることを指す。5Gが医療とAIの懸け橋の役割を果たし、6Gがそれをさらに加速させるというわけだ。